境界型・2型糖尿病に糖質制限がよろしくない理由

糖尿病という病気を理解する

そもそも糖尿病になるのは脂質摂取量が適量じゃないから

糖尿病になる過程が分かると、高血糖になりはじめの境界型や2型糖尿病なりはじめの方が糖質制限するのは非常にリスキーであることが明白です。

ちなみに1型糖尿病は2型糖尿病と原因が全く異なるため、ここでは2型糖尿病に限定したお話しになります。

高血糖になるのはまずはインスリン抵抗性になるのがスタートです。

糖質を摂取してインスリンが発動したのにもかかわらず、糖を細胞に取り込むGLUT(グルコーストランスポーター)の発現数が少なくなってあまり糖を細胞にスムーズに取り込めなくなるのがインスリン抵抗性です。

インスリン抵抗性が生まれる主な原因は過剰な遊離脂肪酸というのが有力な説です。

要は食事から摂る脂質量が適量を超えているため、血中に流れる脂肪酸の量が多くなりすぎることがグルコーストランスポーターの発現を妨げてインスリン抵抗性を生み出し、血糖値が下がりにくくなってしまうというわけです。

血糖値が下がらなければ膵臓のβ細胞は追加インスリンを出し続けます。

こうして血中に糖質は沢山あるのにもかかわらず、細胞がグルコース不足となり永遠とインスリンを出さないといけなくてβ細胞は疲弊してギブアップして縮退していって最終的にインスリン分泌不全の2型糖尿病になってしまうというのが単純化した流れです。

ここまで悪化してしまいますと、単に痩せてインスリン抵抗性がなくなってもインスリン分泌量自体が足りなくなるので完全に治るのは難しくなります。

そうなる前に本当はなんとか手を打たないといけないわけです。

糖質制限すれば痩せるし血糖値も下がるけど・・・

健康診断などでHbA1cが5.6を超えてきて糖尿病要注意ですよという結果が出て、今は血糖値を下げる方法などを検索したりすると簡単に糖質制限すれば血糖値が下がってHbA1cの値も正常値に戻るという情報が得られてしまいます。

こういった旨そうな情報を得た現代人は糖質制限に手を出してしまいます。

そして炭水化物を断つわけです。

高血糖になる人というのは多少体重が増加している=摂取カロリー過多状態ですから、その状態で炭水化物だけを抜けばカロリー収支バランス的にちょうどいい具合に摂取カロリーの方が下回ることでしょう。

ここでタンパク質や脂質の摂取量も減らそうとすると食べるものがなくなってしまいますから、基本的にタンパク質と脂質はそれまでと同量か、炭水化物を減らした分だけ増えます。

ただ、摂取カロリーと消費カロリーの収支でいえば摂取カロリーの方が下回りますので体重の値は落ちていきます。

また、血糖値やA1cの値も血糖値を唯一上げる炭水化物を摂っていないのですから当然下がります。

そして次回の血液検査を行うと正常値になります。

「めでたしめでたし、良かった良かった・・・」

んなわけない。

糖質制限では根本原因を何も解決できない

血糖値が上がるから、糖質摂取を減らそうっていうのは単なる対処療法にすぎません。

対処療法を続けている間は一見まともな数値が出ますから良いことのように錯覚しますが、根本原因を正さなければ一生対処療法を続けなければならなくなります。

血糖値が上がりやすく下がりにくいのはインスリン抵抗性が出ているからであり、インスリン抵抗性の要因になっているのはその人のキャパを超えた脂質摂取からきているケースが多いのです。

糖質制限を行うということは、「低炭水化物・高脂質食」になるということ。

根本原因である脂質摂取が減らないばかりか増える傾向になります。

こうしてどんどんインスリン抵抗性は強まり、耐糖能が悪化します。

これで糖尿病が治ると思いますか?

糖尿病の入り口付近にいる人が取るべき手段は糖質制限ではなくカロリー制限が正しい

現在、糖尿病と判定される血糖値になると食事指導としてカロリー制限を指導されます。

PFCバランス(炭水化物とタンパク質と脂質の摂取バランス)が炭水化物60%というのは多すぎると私も思いますが、低炭水化物食で減量するのではなく、カロリー制限(脂質量を減らす)ことでまずは痩せましょうというのは実は理にかなっているのです。

殆どの人はそれまでの食生活で脂質摂取量が多すぎることでカロリーオーバーになってインスリン抵抗性を生み出していますから、脂質量を減らすことでインスリン抵抗性を下げて、痩せれば内臓脂肪が減ることでインスリン感受性が上がり、食べ過ぎ肥満型の糖尿病の場合はこれで多くのケースで血糖値が下がり、また糖質を摂ってもあまり血糖値が上がらない状態に戻ります。

もちろん生活習慣が悪化すれば、また高血糖状態になるリスクがあるというのは変わりませんので「完治した」という風には医療的には捉えないようですが、実質的にはこれで良くなって、再びカレーライスやラーメンなど食べても食後血糖値が爆発しなくなります。

ところが糖質制限で痩せた場合、根本原因(脂質過剰)は変わらず残っているので見かけの血糖値だけ良化させても、カレーライスなんぞ食べようものなら食後血糖値大爆発です。

同じように血液検査の結果が「異常なし」だとしても中身が全く違うわけです。

同じ努力をするなら糖尿病の世界と反対側に走り出さないと治ることはないと思いませんか?

糖尿病を治すために

ページの先頭へ